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.夜明け その1

 

こ、ウィニーレイン国にあるアレン島は、島全部がアレストロ大国の上流貴族の子供のための学園である。今日は五月二十日。生徒は、もうすぐ休暇なので皆浮かれている。

一つの教室を覗いてみよう。この部屋は一番上等な部屋の一つだ。少女が三人いる。彼女達は、エピ、ウー、イリン国の王女達である。三人を紹介しよう。

まず、左に座っている黒々とした髪をいじっている少女は、エピ国の第一王女、フィージニア王女である。プライドが高くて有名だ。次に、彼女の隣に座っている真面目に勉強している茶色の髪の少女は、ウー国の第一王女、フィンニア王女である。小柄で病弱な彼女は優しく、博学な少女である。最後に、窓の外ばかり見惚れている右に座っている少女を紹介しよう。彼女がこの話のヒロイン、イリン国の第四王女、ウィンアウト=ウィンレイト王女である。勉強が大嫌いな活発で明るい王女である。キラキラとしたグリーンの目とたっぷりとした黄金色の髪を持ち、アン王女に憧れている。

三人の母親は、姉妹でウィンニーレイン国の王女であった。だから、三人は従姉妹である。

「ウィンアウト様、しっかり勉強して下さい。」と先生がおっしゃった。

「でも先生、外はあんなに天気が良いのよ。私は遊びたいわ。」王女は言い返した。

先生は、少しの間考え、「今日はよく頑張りましたし、解散としましょう。」とおっしゃった。

「ありがとうございました。」先生は出て行かれた。

 「じゃあ、わたくしは部屋に行きますわ。」

フィージーことフィージニア王女はすまして出て行った。

「もう少しマシな言い方はないのかしら?」フィンことフィンニア王女はプリプリして言った。

「ねえ、フィン。私はこれから風の丘に行くのだけど、あなたはどうする?」

ウィンアウト王女ことウィンが聞いた。

「わたくしは図書館に行きますわ。」

「わかった。じゃあ、またね。」

 

 風の丘は、誰もいなかった。ウィンは丘に座った。木が所々に生えている。周りにもたくさん丘があり、森もあり、彼女の姿は誰にも見えない。何度、人々が帰ってこないウィンを探し回ったことか。ウィンはここが好きだ。ここの風はひときわ気持ちが良い。ウィンの長い巻き毛が風に乗ってなびく。ウィンは草の上に寝転んだ。彼女が最後に覚えているのは、白い、綿あめのような雲・・・。

「ねえ、ウィン、起きてちょうだい!」

―私を呼ぶのはだれ?―

ウィンはゆっくりと目を明けた。すると心配そうな顔をしたフィンが目に入った。

 「フィン、どうしたの?」

 「もう、ウィンったら。もう夕方よ。ディナーの時間が近づいても来ないから、もしかしてと思ってきたら、案の定眠っているのだもの。」クスクス笑いながらフィンが言った。

 「もう夕方なの?」ウィンはキョトンとしている。

 「そうよ。早く戻りましょう。わたくし達を探していたら厄介よ。」

 「そうね。ねえフィン、迎えに来てくれてありがとう。」

ウィンはゆっくり立ち上がりながら言った。

 「いいのよ。親友でしょ。」フィンはニコリと微笑んだ。

二人は、夕日を背に手をつないで寮に戻っていった。

 

 

 

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